白内障が進行すれば、かすんで見えるだけではなく、眼鏡をかけてもピントが合わないと感じるようになります。運転免許の更新に必要な視力が得られないだけではなく、生活の中で不自由を感じられた場合に、白内障の手術を決意される患者様が多いです。
まず、日帰りで手術を行うか、入院で手術を行うかを決めます。入院での手術を希望される患者様には、御希望の病院に紹介状を作成いたします。
日帰り手術を御希望の患者様には、まず手術日を決めていただきます。手術日は水曜日の午前中で、1か月ほど先以降に予約していただくことが多いです。術後の木曜日の午前中、金曜日、土曜日に必ず受診できる日程で手術日を予約していただきます。
手術までに手術時に挿入する眼内レンズの度数を決める検査、採血、手術についての説明などのため、3回ほど御来院いただくこととなります。これら検査は予約診察となります。
また、喘息、不整脈、高血圧、糖尿病など全身状態のコントロールが不良な患者様に関しては、かかりつけの内科医など主治医の許可を得て、投薬内容などを確認した上での手術になりますので、問い合わせのための情報提供書を作成いたします。
なお、リカバリールームでは、薬剤師および視能訓練士が術前の散瞳などの処置を行い、手術室では2名の経験豊富な眼科専門医、看護師、眼科専任スタッフが対応しております。充実した人員で万全の体制で手術を行っておりますので、安心して手術を受けていただけます。また、当院では最新の白内障手術装置(アルコン社製センチュリオンビジョンシステム)を使用して手術を行っております。
1) 散瞳検査
散瞳点眼薬を用いて瞳を広げ、白内障の程度や、瞳の広がり方を調べます。白内障以外の眼底疾患や緑内障の有無などを診ます。散瞳点眼薬に対するアレルギーがないかもわかります。
2) 角膜内皮細胞数検査
角膜の奥側にある細胞(角膜内皮細胞)の数が少ないと、手術に耐えることができないため、スペキュラーマイクロスコープという装置を用いて測定します。
3) 眼内レンズの度数決定のための検査
眼内レンズの度数は、角膜の曲率(屈折度)と、眼軸長を用いて決定されます。手術後、裸眼(眼鏡なしの見え方)で、遠方にピントを合わせるか、近方に合わせるかによって、眼内レンズの度数が異なりますので、術後にピントの合う距離(ターゲット)は、患者様のライフスタイル(よく本を読むか?テレビを観るか?車の運転をするか?など)、お使いの眼鏡を元に患者様ご自身が検査員とよく相談して決定します。
IOLマスター(光学的眼軸長測定装置)を用いて、眼の表面から網膜の黄斑部までの長さ(眼軸)を測定します。白内障による混濁が強くIOLマスターでは測定が不鮮明な場合には、Aモード(超音波眼軸長測定装置)を用いて、眼軸長を測定します。
4) 涙道検査および結膜細菌培養検査
眼と鼻をつなぐ涙道がつまっていると、術後に感染症を起こしやすくなります。また結膜に常在菌が多いと、同様に術後の感染症のリスクが高くなります。そのために、術前に常在菌に対する抗生物質の耐性検査を行い、術前・術後に適切な抗生物質の処方が行えるようにします。術前3日前から、術後感染症予防のため適切な抗生物質の点眼を1日3回開始します。
5) 血液検査(採血)
白内障手術では、数ミリの切開創から白内障を取り出し、小さく丸めた眼内レンズを挿入します。術中に止血処置は行いますが、少量の出血を来し術後に結膜下出血をおこします。そのため、術前に肝炎ウイルス感染症などの血液検査を行います
白内障の硬さや瞳の広がり、眼底疾患の併発など患者様ごとに異なる内容の説明書と、手術の同意書を、術前に説明の上、患者様にお渡します。手術までに本人様または代理人の署名を頂いた同意書を提出していただきます。同時に、全身状態について、かかりつけ内科医などからの情報提供書や投薬内容などを確認いたします。
手術の一週間前に、手術中や手術後の洗顔・洗髪など注意点について説明をします。また、手術室でのベッドでの姿勢の確認をします。
受付からリカバリールームに御案内します。術着に着替え、心電図用電極シールを胸に貼ります。瞳孔を開く散瞳薬、局所麻酔薬を点眼します。手術は30分以内に大半の方が終了しますが、術中にはトイレに行けませんので、トイレは入室前に必ず済ませておいて下さい。手術用キャップをかぶり、フェイスガードをつけて手術室に入室します。
手術室では、心電図、血圧計などモニターをつけます。術中のアナフィラキシーショックや高血圧など全身のトラブルに備え、血管を確保し、同時に抗生物質の点滴を行います。局所麻酔薬を点眼し、眼の周りをヨード液で消毒をします。
手術が始まれば、15 分から20分ほどで手術は終了します。術後に眼に大きな眼帯を着けます。片眼では見にくく、段差も分かりにくいので気をつけて歩きましょう。術後 30 分から 1 時間ほど、リカバリールームで休憩してから帰宅します。原則的には、手術翌日の木曜日から土曜日、翌週の月曜日は朝 9 時に受付・受診してください。その後は、診察の間隔は徐々に空いていきます。
御会計は翌日に、手術当日と翌日分をまとめてお支払ください。手術の費用は健康保険が1割負担の方は14000円ほどです。3割負担の方は42000円ほどです。70 歳からの高齢受給証や、75 歳からの後期高齢者の1割の方の自己負担金額は月額 18000円までの限度額があります。1か月のうちに自己負担金が限度額を超えたとしても、お支払は限度額までの支払となります。70 歳以上の方で3割負担の方や、1割で住民税非課税の方は限度額認定証を提出していただいてもよろしいですが、それら以外の方は、限度額認定証は必要ありません。不明な点がある場合は、ご相談ください。また、限度額認定証を提出される場合には、月初めにお願いいたします。
短期滞在手術等基本料をいただいています。
手術後は、手術前に使っていた眼鏡(遠見用および近見用)は合わなくなります。術後早々に、運転をされる方には術後1週間に眼鏡処方をします。大半の眼鏡の必要な方には術後2か月ほど経過して、眼内レンズが眼内に定着してから眼鏡処方箋を発行します。